GOKAN。
『UNDER WATER OVER』
脚本 渋谷 真一朗
登場人物
相田 一輝(34) 物語の主人公。同期の加藤桂子と2年前から付き合っている。最近新人の墨田の誘惑に負けそう。基本的には真面目。仕事ができる男。
津田 哲夫(26) 相田に憧れている。実はゲイ。原因不明の悪戯電話(外人から?)に悩まされている。実は悪戯電話の相手は矢沢。
西川 紀夫(50) 愛想がよく優しいパパであり、面倒見がいい中間管理職。子沢山家族を
抱える。
マイケル(24) メッセンジャー。正義感が異常に強い、が、肉体的にも精神的にも弱い。
社長・うどん屋の主人(55) インターネットTVショッピングで自ら出演している。 ・社長の双子の弟。
分倍河原 木場雄 ビルの管理会社でアルバイトをしている役者志望の警備員。多汗症。
ヅラ。
加藤 桂子(33) けっこう長い友達期間を経て相田一輝と付き合うこととなる。最近結婚を催促している。後輩の墨田とは仲が悪い。しっかり者。
墨田 翔子(24) 短大を卒業し、とりあえずOLに。彼氏は何人かいる。美形でセクシーな
雰囲気。密かに独立事業考案中。その事で相田を利用しようとしている。
矢沢 耀子(33) 加藤の同期。おせっかい。異性を意識する中学生のような気質が抜けない。彼氏いない歴33年。津田にストーキング行為をしている。
堀 ニ三四(55) お局OL。社長の愛人、だと思っている。
ぺ ・ ニスン(32) 韓国支社から、共同プロジェクト進行の為に単身赴任。もちろん名前に
コンプレックスを持っている。日本では「冴木麗子」と言う名を使用。
若井 愛子(37) 自意識が異常に強い。想像妊娠中。果てしなくエロ。元芸人志望。
シーン@
――― 明転 ―――
相田、津田、西川、堀、墨田、板付き。仕事をしている。
津田、電話をしている。
津田「はい。はい。はい。ああそうですか・・・。それは本当に申し訳ありませんでした。いえ、それは・・・はい・・・あのこちらとしましても・・・、あ、そうですか・・・申し訳ありません。」
相田、津田の様子が気になる。
相田「代われ。」
津田「お願いします。」
相田「お電話代わりました。営業課長の相田と申します。」
堀「まだまだね。トゥダくん。」
津田「津田です。」
堀「まだあなたに主任は早かったかしらね、トゥダくん。」
津田「津田ですから。」
西川「まぁまぁ堀さん、前途洋洋の若者をあんまり苛めないの。」
堀「津田ー、あんた折角主任にしてもらったんだから、もっと気合入れて頑張らないと、誰か
さんみたいに万年平になっちゃうわよー。」
西川「あれ、これは厳しいなぁ(笑)」
堀「いいことぉ、うちの課は営業だけしてりゃあイイってもんじゃないのよぉ。まずあんたみたい
なタイプはさぁあ・・・」
津田「堀さん口臭い。(相田の元へ)」
堀「・・・・・。(固まる。)」
西川「おっこれは結構ショックだぞ(笑)」
堀「あんたは黙ってなさいよ!」
西川「あ、怒るとまた皺が増えますよ。なんつって(笑)」
堀「もうほんとウザイ。ウザイわね!?墨田。」
墨田「はぁ。(臭そうにする)」
堀「・・・・・。(口臭をさりげなくチェックする)」
相田「(かなり大袈裟にハキハキと)ありがとうございます。ええ任せてください、はい、あ、本当ですか。ええ、もうすぐにでも。ありがとうございます!はい、それでは失礼します。」
津田「先輩・・・。」
相田「うん。」
津田「すいません、どうもおれまだ苦情処理は慣れなくて・・・。」
相田「大丈夫だよそんな顔すんな!何の為におれが居るんだよ!」
津田「はい・・・。」
相田「おれだっておまえくらいの時は散々西川さんにケツ拭いてもらったんだから。」
津田「どういうことですか?(真剣な面持ちで)」
相田「育ててもらったって事だよ。」
津田「なんだそういう意味か・・・。(安堵)」
西川「育ちすぎちゃって今じゃ僕の上司。」
相田「コーヒー奢れよ。(手を見せる)」
津田「はい!(笑顔になる)」
相田「あ、西川さんさっき頼んだ書類出来てる?」
西川「うん。もうバッチリ。」
相田「ああ・・・また全部ローマ字になってるー。」
津田、退場しようとするが、墨田が代わりに行くと言い一旦退場。
西川「このPCローマ字しか出なくなっちゃってるんだよ。」
相田「もう、変換の仕方300回くらい教えてるでしょうが。」
墨田、カップのコーヒーを持って入場。
相田「あと両手使ってくださいって言ってるでしょー。」
西川「だって両手使うと難しいんだよ・・・。(マウスを左手で持とうと腕を交差する)」
相田「自分で難しくしてるそれ!」
墨田「先輩、ご苦労さまです。」
相田「おう、机置いといて。」
墨田「はい。」
相田「どうしてそうなるかなぁ。」
西川「PCってやっぱり慣れないなぁ。」
墨田「熱っ(書類にコーヒーをこぼしてしまう)」
相田、振り向くと墨田がこちらを指を咥えて見ている。
相田「(暫し見とれる)・・・。大丈夫か・・・」
墨田「ごめんなさい・・・書類にこぼしちゃった・・・。」
相田、書類を拭こうとすると、墨田が
墨田「あ、先輩私がやります(ハンカチで拭く)」
相田「いいよいいよ、火傷しなかったか?」
墨田「はい。あっ」
相田と墨田の手が触れる。
墨田「ごめんなさい(照れる)」
相田「(笑顔)い、いいんだよ。」
墨田、相田のネクタイがこぼしたコーヒーについていることに気付く。
墨田「あー、せんぱーいコーヒー付いちゃってるぅー。(笑)」
相田「あっ、本当だ(笑)」
墨田「もーう。」
墨田、相田のネクタイをいやらしく拭いてあげる。
相田、墨田から目が離せなくなって、鼻の下を伸ばしている。
堀「いやらしいわねーんとにーったく。」
津田の携帯に着信
津田「はいもしもし。・・・。(切る)」
堀「また?」
津田「はい。」
墨田「携帯変えたら?」
津田「それも面倒だし。」
西川「どんな内容なの?」
津田「ずっと英語で一方的に喋ってるんです。だから外人じゃないかって・・・。」
相田「それなら、YOU HAVE A WRONG NUMBER、って言ってやればイイんだよ。」
津田「それも試しました。」
西川「まあこういう時代だから、個人情報はどこで流出してるか分からないからね。」
相田「西川さん、ココをこうするのね。」
津田「それは言えてますよね。」
堀「因みに番号いくつなの?(いかにも心配しているように、さりげなく)」
津田「教えません。」
堀「・・・。(口臭をチェックする)」
西川のデスクに受電
西川「はい。インターネットテレビショッピングの○○でございます。あ、お父さんだよ。うん。お父さんももうすぐ食べるよ。うん。ちゃんと残さずに食べるようにな。はーい。」
相田「相変わらず家族仲いいですね。」
西川「そうでしょ。」
堀「気持ち悪いわよ。」
西川「あ、ひがんでるな。」
堀「ふん。奥さん不細工なくせに。」
西川「堀さんよりはマシだよ。」
墨田「いつもなんでお昼前に電話来るんですか?」
西川「よくぞ訊いてくれました。娘たちがこうして電話で、今からお弁当食べるよ、って言ってきてくれるの。そうすれば離れていても家族で食事しているのと同じでしょ。」
墨田「へぇー。なんか羨ましいな。」
相田「なんだ墨田、おまえならその気になればいつでも結婚できるだろ。」
墨田「なんで?」
相田「だっておまえ彼氏いっぱいいそうじゃないか。」
墨田「・・・・・。」
津田「先輩、そういう発言はデリカシーないですよ。」
墨田「・・・・・。先輩にそんな風に言われるとあたし、寂しいな。(俯く)」
相田「(見とれる)・・・。ごめんな。そんなつもりじゃ・・・。」
津田「先輩、西川さん、お子さん何人でしたっけ?」
相田「え?」
西川「15人だよ。」
堀「作り過ぎよ。」
西川「どういうわけか百発百中なんだよね。」
シーンA
矢沢入場。ドアの外で携帯電話をいじっている。続いて
加藤入場。中に入ろうとすると矢沢が引き止める。
ドアの外で立ち話。
矢沢「で?どうなの相田とは?go ahead」
加藤「ん?あ、うん。最近話はするようにしてるんだけど・・・。」
矢沢「reary?ほんとに?」
加藤「うん。早く結婚したいって言ってるよ。」
矢沢「で?相田はなんて言ってるの?he・・・、he what?」
加藤「すぐ話し逸らす。あんまり話したがらないの。」
矢沢「ああん、そんなに気にしちゃダメ。dont・・・、dontよ。男子なんてみんなそんなモンなんだから。」
加藤「そうかなぁ・・」
矢沢「なによー、go on a picnicよ!ここまで来て弱気になってどうすんの?」
加藤「うん。ありがと。なんかいつも矢沢に愚痴こぼしちゃってごめんね。」
矢沢「いいのよ。dont・・・(思いつかず)いいのよ。」
加藤「矢沢は?その後うまくいってるの?サミュエルとは。」
矢沢「(照れる)うーん、まぁね。でも彼モテるからやっぱり心配(エヘッ)。he・・・、he・・・(思いつかず)ちょっと心配(エヘッ)。」
加藤「早く英語覚えなきゃね。」
矢沢「そうなの。前も話したけど言葉の問題が結構ネック(英語の発音で)なのよね。 彼はウガンダ共和国だから母国語がスワヒリでしょ。普段は共通語のイングリッシュ(英語の発音)で会話するんだけど、感情がのってくるとすぐスワヒリでしょ?」
加藤「いやすぐスワヒリでしょ?って言われても・・・。授業料バカにならないんじゃない?」
矢沢「そうなの。コマーシャルでもやってるけど、講師はみんなパン職人でしょー。」
加藤「パン職人なの?」
矢沢「あれ、何だっけ? 講師はみんな・・・媒酌人?」
加藤「違うと思う。」
矢沢「ん?・・・講師はみんな懐古趣味?」
加藤「骨董品が好きなの?」
矢沢「単身赴任?」
加藤「ある意味ね。」
矢沢「菜食主義?」
加藤「いるかもね。」
矢沢「きんにくマン?」
加藤「もう行こう。」
加藤、矢沢、皆の中へ
加藤「相田、はい。頼まれてた資料。」
相田「おおわりぃ、そこ置いといて(軽くあしらう)」
加藤「・・・・・。」
矢沢「なによ、偉そうに。ねぇ。」
加藤「いいのよ。」
矢沢「あ、そうだ津田ー、今日お昼前半?後半?」
津田「えーと矢沢さんは?」
矢沢「my name is後半なんだけど―――」
津田「―――じゃあ前半です。」
矢沢「えーいつも合わないねー。」
津田「ははは。」
相田「はい出来たっと。」
西川「いつも悪いね。」
相田「いい加減憶えて下さいよ西川さん。」
加藤「相田、お昼は?」
相田「分かんない。」
加藤「・・・そう。」
津田「加藤先輩、昼一緒に行きましょう。」
加藤「・・・うん。」
西川「お二人さんは食堂かな?」
加藤「うん。節約しなくっちゃ。」
西川「堀ねえさんは?」
堀「うどん。」
西川「毎日だな(笑)。」
矢沢「あそこのうどん腰がありすぎません?」
堀「ううん。」
津田「天麩羅がおいしいんですよね。何の天麩羅だっけ・・・。」
堀「うど。」
津田「あ、そうそう。」
西川「それのどんぶりもあったでしょ?」
堀「うん。」
西川「なに丼だっけな?」
堀「うど丼。」
矢沢「でもいち押しはあれでしょ?何も入ってないやつ。」
津田「そうそう、す・・・?」
堀「うどん。」
西川「いややっぱりあそこはあれだよ、ざる・・・?」
堀「うどん。」
加藤「堀さんバカにされてます。」
堀「ちょっと!さっきから私、『う』と『ど』と『ん』しか言ってないじゃない!」
相田「墨田ー、午後の会議で使う書類できた?」
墨田「ごめんなさい先輩、まだ・・・。」
相田「え?まだ?どこで躓いてんだ?」
墨田「ここの数字って・・・」
相田「ああここはおれのファイルからそのまま持ってきて・・・(マウスを動かす)」
墨田「え?でもここって・・・(相田の手に自分の手を重ねマウスを動かす)」
相田「そこはそれでいいんだけど、ここから・・・、なんかおまえいい匂いするな。」
墨田「やっだぁ先輩エローイ。」
堀「ちょっと、なに乳繰り合ってんのよ。」
矢沢「ちょっと相田、あんたセクハラじゃない!?」
相田「え?ああ、ごめん・・・。」
墨田「あ、私はそんな風に思ってないんでイイんです。先輩教えてくれてるだけだから。」
加藤「あなたは良くても周りの人は気になるわよ。そんなにイチャイチャしてたら。」
墨田「え?イチャイチャしてました?ひがんでるんじゃないんですか?(失笑)」
加藤「私だけじゃなくてみんなそう思ってるわよ。」
墨田「でも相手が津田だったら何も言わなかったんじゃない!?」
矢沢「そんなことないわよ!」
墨田「加藤さんに訊いてるんです。」
加藤「私はそういうことを言ってるんじゃなくて、あなたいつも香水もキツイし、スカートも短か過ぎるし、接客する時もマニュキア―――」
墨田「―――じゃああたしのスカートが短いの嫌な男性居ます?」
男性陣(津田含む)、下を向き、合わせて首を横にゆっくり振る。
墨田「ほら。やっぱりひがんでるだけじゃん。」
加藤「違うわよ!」
相田「・・・ま、まぁまぁ。おれがさ・・・」
加藤「あなたは黙ってて!」
相田「・・・なんだよ、せっかく・・・」
加藤「せっかく何よ。」
墨田「こわーい(相田に隠れる)。」
加藤「ちょっと墨田、あなたね―――」
墨田「―――はい分かりました。」
墨田、退場
相田「おいちょっと墨田。・・・ったく。おまえなんでそんなにムキになるんだよ。」
加藤「あなたがいつも助平な顔してるからよ!」
矢沢「加藤、wait。」
加藤「だって・・・。」
相田「もともとおれはこんな顔なんだよ。」
津田「そうですよ。相田先輩はもともと助平な顔なんですよ。」
相田「おまえは黙ってろよ。」
津田「すいません、助平顔の相田先輩。」
相田「助平顔は余計だよ。」
西川「まあまあ皆さん、と助平顔の相田君、気を取り直して仕事仕事。」
相田「わざわざ付け足さなくていいですから。」
堀「ほら、お昼前だからみんなお腹減ってるのよきっと。」
加藤「大きな声出してごめんなさい。」
堀「相田、じゃなかった助平顔の相田もさ―――」
相田「―――だからいちいち助平顔って言い直さないでいいの!うどんのくせに。」
堀「うどんじゃないわよ!」
西川「ほらほら、うどんも助平顔もよしなさい。」
相田「もういいですよ。」
堀「ところで私はなんでうどんになったの?」
相田、墨田を案じ退場しようとする
加藤「どこ行くの?」
相田「どこでもいいだろ。」
相田、退場
シーンB
西川「まったく、お二人さんは仲が良いんだか悪いんだか。」
矢沢「ケンカするほど仲がいいのよ。私なんかいつもサミュエルと、どちらかが落ちるまで関節技決め合うんだから。」
加藤「それはちょっと危険じゃない?」
若井、お腹を抑えながら入場
若井「あの・・・コピーとってきましたけど。」
加藤「ありがとう。大丈夫だった?」
若井「ええ、ちょっとまだ慣れないんで、帰りに少し迷っちゃいました。」
矢沢「マタニティーなんだからdont無理よ。ねっ。」
若井「dont無理てきみ!(つっこみ)」
一同「・・・。」
若井「あ、すいません。つい・・・。」
加藤「あはは。あの、若井さんはね、ココでバイト始めるまで芸人さん目指してたのよね!?」
若井「は、はい。」
西川「なんだそうだったの。」
堀「最近女の子も多いのよね。」
津田「なんかネタやってみせてよ。」
矢沢「津田ー。」
若井「あ、いいんです。きっとそう言われると思ってたので。」
加藤「え、でも大丈夫?」
若井「(もうネタに入っている)そうそう・・・まあそうやけどね。・・・うんうん。・・・それは言い過ぎでしょー。・・・なんでやねん!(架空の相方に突っ込む)」
津田「もしかして一人でつっこみの部分だけやってる?」
加藤「架空の相手とね。」
矢沢「ピン芸人じゃなかったみたいね。」
若井「・・・やめさせてもらうわ。どうもありがとうございました。(お辞儀をして退場しようとする)」
一同「ちょっとちょっと、若井さん。」
若井「あ、すいません、つい。で、どうでした?」
加藤「今のでどうでしたって言われても・・・。」
若井「(ぶつぶつと)やっぱりだめか・・・(自分のお腹をグーで殴りながら首をひねっている)」
加藤「ちょっとちょっとちょっと。」
若井「相方に逃げられちゃって。」
西川「もう芸人さんは諦めちゃったわけ?」
若井「ここでバイトさせてもらいながら新しい相方を見つけようかと。」
加藤「それ場所間違えてない?大丈夫?」
若井「あの人とか(堀を指差す)結構キャラだけでいけるんじゃないかと。」
堀「私は芸人なんかやらないわよ!」
若井「うどんてきみー!(つっこむ)」
堀「うどんなんて言ってないわよ!」
若井「(ほら。と堀を指差し加藤を見る)」
加藤「わかったから。」
冴木、書類を持って入場
西川「あ、冴木さんおつかれさまです。」
冴木「おつかれさま。来ました?」
矢沢「あ、マイケルですか?今日はまだですよ。」
冴木「そう。」
加藤「冴木さん、紹介します。昨日からアルバイトで働いていただいてる若井さんです。」
若井「あの、マイケルってあの・・・」
冴木「はじめまして。韓国支社から特別プロジェクト企画進行の為に赴任している冴木麗子です。」
若井「あ、どうも。で、マイケルってあの・・・」
加藤「若井さん、ちゃんとご挨拶を。」
若井「あ、すいません。若井です。で、マイケルってあの・・・」
冴木「彼のことが気になるの?」
若井「え、だって・・・ねぇ加藤さん。」
加藤「え?なに?」
若井「誰だって気になりますよね?矢沢さん。」
矢沢「なにが?」
若井「メスなら誰でも・・・ねぇ堀さん。」
堀「メスならって?」
マイケル、社長の収録のビデオを持って入場
マイケル「おつかれさまです!マイケルです!」
若井「来たっ。」
冴木「若井さんて面白いのね。」
マイケル「こちらが今日の収録のビデオです。書類の方は何かありますか?」
西川「冴木さんがあるみたいよ。」
冴木「今日はこれをお願い。」
マイケル「了解いたしました。」
冴木「マイケルくん、昨日からアルバイトで働いてくれている若井さん。」
マイケル「あ、どうも。(握手をしようとして○○を落とす)あ、すいません。」
若井「あ、いいんです。(拾う、気付くと目の前にマイケルのモッコリがそびえている)あっ・・・。」
マイケル「ありがとうございます。それじゃ!」
若井「・・・(よだれを垂らしている)」
冴木「若井さんよだれ垂れてるよだれ!」
若井「あ、なんでもありません。」
加藤「大丈夫?具合でも悪い?」
若井「あ、全然平気です。むしろジュンときた。」
加藤「え?」
若井「なんでもないです。」
冴木「変な娘ね。」
冴木、退場
シーンC
西川「さあさあ、お昼になる前に社長の収録ビデオ見ちゃいますか。」
ビデオをセッティングし、社長が収録してきたばかりの通販映像を皆で見る。
*** 『画コンテ』別紙参照 ***
司会「はい、と言うことでね、まだまだ寒いですけれどもね、今日も張り切って商品の方ご紹介させて頂きたいと思います。私司会の、万田林村電三、です宜しくお願いします。(拍手SE)そして、」
社長「はい、インターネットテレビショッピングでお馴染みの○○(会社名)です、宜しくお願いしまーす。(拍手SE)」
司会「さて社長、本日の商品の方を早速ご紹介していきたいと思うんですが、なにかさっきから非常に良い香りがしているんですが。(主婦の笑い声SE)」
社長「そうなんです。本日の商品はこちらです。(主婦の感嘆の声SE)」
司会「これは美味しそうですねぇ。」
社長「おつまみとしていただいても、もちろんご飯のおかずにも、お子様のお弁当なんかにももってこいの、魚肉です。(主婦の感嘆の声SE)」
司会「ああ、これは美味そうだぁ。社長ちょっといただいてもいいですか?(主婦の笑い声SE)」
社長「どうぞどうぞ。」
司会「(食べる)ああ、これは美味しい。(主婦の感嘆の声SE)これ秋刀魚ですか?」
社長「違います。」
司会「あ、鯖かな?」
社長「違います。」
司会「すいません。もうひとついただかないと分からないなぁ(食べる)(主婦の笑い声SE)」
社長「どんどん食べてください。身体にも良いですから。」
司会「鰯か鯵でしたねこれね。」
社長「違いますね。」
司会「・・・あ、違う?」
社長「おしい。」
司会「もう降参。美味しすぎて分からない。(主婦の笑い声SE)社長こちらはじゃあ先に商品名の方ご紹介していただけますか?」
社長「分かりました。本日ご紹介させていただいたのは、埼玉水産いち押しの商品で、魚肉の缶詰、プロバンス方面風、曖昧なソースがけ、漁師の気まぐれだらけ仕立て、怒りん坊ソース風味、森の茸達の反逆風、気まぐれ缶詰風味、妻楊枝を沿えて、でございます。(主婦の感嘆の声SE)」
司会「ずいぶん立派な商品名ですね。で、何の魚なんですか?」
社長「・・・まあ、・・・魚ということに固執していない、というのがこの商品の特徴でして・・・」
司会「・・・あ、はぁ。と言うことはまぁ魚ではない、ということで・・・」
社長「まあ、あの・・・そう思っていただいても美味しく頂けるんではないか、というような肉、ということで。」
司会「・・・そうですか。んーなにかこう、込み上げてくるものがありますねぇ。(主婦の感嘆の声SE)」
社長「肉には変わりありませんから。」
司会「埼玉には海はなかったように思うんですが。」
社長「あ、埼玉水産の『埼玉水』は人の名前です。」
司会「なるほど。サイタマスイさんなんですね。」
社長「自信を持ってお届けしたいと思います。」
司会「はあ。それでは社長、今回のこちらの商品、ズバリお幾らでご提供下さいますか?」
社長「はい。今回のこの、魚肉の缶詰、気まぐれ缶詰風味、妻楊枝を沿えて、の方をですね、今回は特別価格といたしまして、なんと十円を切りまして、八円でのご提供とさせていただきます。(主婦の感嘆の声SE)」
司会「八円です奥様!何の肉かはともかくとして八円は安い―――」
ビデオOFF
加藤「もういいわよね。」
津田「なんでいつも十円以下なんでしょう?」
矢沢「社長頭おかしいのよ。」
堀「分かってないわねあんた達は。社長はね・・・入社した時から・・・ちょっと聞いてる?」
一同、堀の話を聞いていない。
相田、墨田入場。服装、髪型が若干乱れている。
お昼のチャイムSE。堀の声消される。
堀「入社した時から・・・うるさいわよチャイム!」
西川「さあさあお昼お昼。」
墨田「先輩、お昼先に行っちゃっていいですか?」
相田「お、もう昼か。おお。行ってこい。」
加藤「相田・・・」
相田「ん?・・・なんだよ?」
加藤「・・・。」
津田「加藤先輩、昼行きましょ。」
加藤「・・・うん。」
西川「堀さんも早く行ったら。」
堀「言われなくてもいくわよハゲ!」
西川「禿げてないよ。」
加藤、津田、堀、墨田、退場
シーンD
分倍河原入場
分倍河原「・・・。(西川と堀の会話が少し気になる)」
相田「あ、昨日のことですか?」
分倍河原「電気、最後誰でした?」
相田「おれです。すいません。つい消し忘れちゃって。」
分倍河原「ああ。ええあの・・・最後の方は一応電気の方・・・。」
相田「はい。すいません。これから気をつけます。」
分倍河原「ええ。あの・・・お願いします。まあ一応見廻りはしておりますが、まああの・・・不経済ということだけではなくてですね・・・。」
若井「・・・。(分倍河原の頭部を凝視)」
矢沢「あ、分倍河原さん、昨日からアルバイトで働いてくれている若井さんです。」
分倍河原「ええ、あの、入館証の方今作っておりますので。(若井の視線が気になる)」
矢沢「あそっか。知ってましたよね。」
相田「そうだ若井さん、分倍河原さんは役者さんなんだよ。」
若井「へぇ〜(まだ頭部から目を離さない)」
分倍河原「いやよして下さい。お恥ずかしい。」
相田「分倍河原さん、若井さんは芸人さん志望なんですよ。」
分倍河原「あ、そうですか。芸人さんでいらっしゃいますか。」
矢沢、若井を分倍河原から離す
矢沢「今度の舞台はどんなお話しなんですか?」
分倍河原「ええ。次の舞台は『イグアナの娘・IN中国』というお話しでございます。」
相田「へぇ・・・。」
矢沢「面白そう!分倍河原さんはなに役なの?」
分倍河原「ええ。あたくしは、イグアナ6とイグアナ11、という役をやらせていただきます。」
西川「どんな役なの?」
分倍河原「ええ。イグアナ12まであるうちの、6と11の役でございます。」
西川「全然分からない。」
矢沢「やってみてくださいよ。」
分倍河原「いや勘弁してください。」
相田「いいじゃないですか、やってみてくださいよ。」
矢沢「若井さんも見たいわよね!?」
若井「興味本位で。」
西川「私も見てみたいなぁ。」
分倍河原「そうですか?じゃあお言葉に甘えて。」
分倍河原、演じようとするが一旦止める。
分倍河原「6と11、どっちがよろしいですか?」
相田「どっちでもいいですよ。」
矢沢「じゃあまず、イグアナ6の方から。」
分倍河原「ああ、6かぁ・・・(嬉しそう)」
西川「じゃあイグアナ11でもいいですよ。」
分倍河原「ああ、11からいっちゃいます!?(嬉しそう)」
相田「どっちがいいんですか?」
分倍河原「じゃ6で。」
分倍河原、イグアナ6をやる。そのまま一旦退場し、戻ってくる。
一同、思い出したように、疎らに拍手を始める。若井はひとりくすくす笑っているが、やがて堪えきれず大笑い。
相田「若井さん。」
分倍河原「・・・あたくし、仕事が残っておりますので、これにて失敬。」
分倍河原、傷ついて退場。
西川「ああ、可哀想に。」
矢沢「若井さん。」
若井「(まだ笑いが止まらないでいるが、ふと異変に気付く)・・・ん?」
相田「地震?」
矢沢「揺れてる。」
暗転、と共に、SE大きなドーンという音
*** オープニング ***
シーンE
暗転中
相田「みんな大丈夫?」
西川「大きかったね!」
矢沢「超びっくりした!」
相田「大丈夫か?すぐ電気点くはずだから。」
矢沢「あたしは大丈夫。」
西川「いや驚いたなぁ・・・。」
明転
オフィス内乱れている。
天井から蛍光灯がぶら下がったり、並んでいた事務デスクが大きくずれていたり、事務椅子が若井のお腹に乗っかっていたり、書類棚からファイル等がとび出していたり、書類がその辺りに散乱していたりする。
一同、(若井を除いて)事務デスクの下に隠れているが、電気が点いて出てくる。
相田「あ、点いた。結構でかかったぞ今の。」
矢沢「来る来ると思ってたけどついに・・・若井さん!」
西川「大変だ!」
一同、若井の上に乗っている事務椅子を退ける
矢沢「若井さん大丈夫!?」
若井「あ、全然平気。」
相田「全然平気なの?」
西川「お腹変形しちゃってるよ。」
若井「あ、(直す)全然平気。」
相田「ええー・・・そういうものなの?」
西川「とにかくみんな無事でよかったよ。」
矢沢「今のって直下型だったの?」
相田「いや、横揺れだったな。ただの大きい地震だと思うよ。」
西川「ああPCはみんな電源落ちちゃってるよ。書類途中だったのに、全部パアだろうか・・・。」
相田「ああ、きっと大丈夫ですよ。大概の企業がそうであるように、うちのサーバーもUPS装備してるはずだから。」
西川「なにそのウーピーゴールドバーグって?」
相田「誰もそんなこと言ってません。UPS、無停電電源装置って言って、こんな時も正常にシャットダウンされるんです。」
冴木、入場
西川「冴木さん、大丈夫でしたか?」
冴木「ああ、こっちも酷いわね。上の会議室にはあたしだけしか居なかったの。他の人はみんなお昼で。」
矢沢「エレベーターは?」
冴木「ダメよ。だって今停電してるでしょ。」
若井「でも電気点いてる。」
相田「今作動しているのは、停電した時のために用意してある、ディーゼル発電機のお陰だよ。」
西川「直下型じゃなくても、停電するくらいだから被害が大きかったんだろうか?」
冴木「それは分からないけど、被害がそれほど大きくない場合でも、地震の揺れによる変電所設備の損壊を回避するため、安全面から送電を停止している場合も考えられるわ。」
西川「と言うことは?」
冴木「え?」
西川「そういうことか。」
冴木「理解できなかったのね。」
相田「冴木さん、非常扉は開いてたんですよね?」
冴木「調べてみたの。そこの東側の非常扉は開いてた。でもそこだけ。38階から下は、とりあえず35階まで降りてみたけど全部ダメ。」
相田「と言うことは残りの西側、北側、南側も期待できないな・・・。」
若井「それってどういうことですか?」
矢沢「閉じ込められた状態って事?」
冴木「そういうことになるわね。」
西川「おいおい頼むよ・・・。(携帯が通じるか試みる)」
相田「どうです?」
西川「やっぱりダメ。」
相田「ダメか・・・。」
西川「心配だな・・・。」
相田「そうだ西川さん、ご家族の安否の確認は、伝言ダイヤルがありますよ。」
西川「なにそのデンゼルワシントンて?」
相田「うるさい。NTTの災害用の伝言ダイヤル、171です。」
西川「そういうことか。(電話をかける)」
矢沢「テレビは?(テレビをいじってみるが、どのチャンネルもホワイトノイズのみ)」
若井「電源は入るの?」
相田「そこも非常用発電機で賄われてるんだね。」
冴木「とりあえず暫くはここで情報を待つしかなさそうね。幸い火事も起きてないようだし。」
西川「相田くん、ありがとう。とりあえず、時計は止まってなさそうだ。」
相田「117に電話してどうすんの!」
西川「だって、天気予報を聞いてもしょうがないし。」
相田「177でもないから。171ですよ。」
西川「そういうことか。」
相田「分かってるの本当に?」
矢沢「津田たち大丈夫かな・・・。」
若井「マイケル・・・。」
相田「加藤と津田は食堂か・・・、ここから9階下だ。」
矢沢「堀さんはいつも、社長の弟さんのうどん屋だから外ね。」
相田「墨田はどこだ・・・。」
冴木「(若井の異変に気付き)どうしたの若井さん?」
若井「う・・・お腹が・・・。」
冴木「大変!」
相田「しっかりして!」
矢沢「ええ、どうしたら良いの?西川さん、こっち来て!」
西川「ああ、大変だ。産気づいちゃったのかな?」
若井「(首を横に振る)大丈夫、大丈夫・・・あっ・・・」
西川「相田くん、とりあえす給湯室からお湯!」
相田「はい。」
若井「ちょっとマイケル!じゃなくて、ちょっと待って!」
西川「どうした?」
若井「・・・あ、(屁をする)」
一同「・・・。(顔を見合わせる)」
若井「・・・屁でした。」
一同「・・・まぁまぁ、ね、良かった、・・・よね。」
若井「すいません・・・(自分のお腹をグーで殴りながら首をひねっている)」
矢沢「だからやめなさいってば。」
西川「とりあえず片付けましょうか。」
相田「そうですね、ずいぶん散らかっちゃったし。」
一同、書類を拾ったり、ファイルを棚に戻したりする。
シーンF
相田「そうだ!矢沢、ラジオ持ってなかった?」
矢沢「あ、ロッカーの中にあるかも。(ロッカーを開けようとする)」
西川「え?ロッカー?」
矢沢「建付け悪くなっちゃったのかな・・・開かない。」
相田「どれ・・・」
相田、ロッカーを開けようとするが中々開かない。
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