『池の神様』

 

神様・・・

樵(きこり)・・・

SE・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SE/鳥のさえずり

樵、木の斧を手に入場

 

樵「さわやかな朝の空気だ。 森の朝は瑞々しい。 さぁ、今日も仕事仕事」

 

SE/木を伐る音。

樵、その音にあわせ斧を振る。 暫くしてひと呼吸

 

樵「いくら毎日手入れをしているとはいえ、もうこの木の斧もそろそろ寿命かな。 新しいの欲しいな・・・。 でも贅沢言っちゃいけない。 まだ使えるもんな。」

 

SE/木を伐る音

樵、その音にあわせ斧を振る

 

樵「滑りやすいな・・・あっ!」

 

樵、斧が手から滑り、放ってしまう

斧、見切れる。舞台袖などへ

SE/斧が池に落ちる音

 

樵「あ〜あ・・・、池の中に入っちゃった。 どうしよう・・・、この池深そうだしな。 これじゃあ仕事にならないなぁ。 困った・・・」

 

神様、斧が飛んでいった方から入場

頭には先ほどの樵の斧がざっくり刺さっており、そこから血が出ている

手には紙袋を持っている

そしてその中には、金の斧と銀の斧が入っている

 

樵「わぁっ」

神様「あなたは毎日この森で働く樵さんですね。」

樵「はい、僕はこの森で樵をして生活しています。 あなたは?」

神様「私はそこの池の神です。」

樵「池の神?」

神様「そう。 池上さと子と申します。」

樵「え!? 池上さん・・・」

神様「池の神の池上です。」

樵「神様って割と普通の名前なんですね」

神様「皆さんよくそう言われます。 これ名刺(名刺を差し出す)」

樵「名刺持ってるんだ・・・。 本当だ、神様って書いてある」

神様「・・・(名刺を促す)」

樵「あ、僕は持っていません、樵ですから。 ていうか神様いつも名刺交換するんですか?」

神様「あなたは今、そこの池に斧を落とされましたね!?」

樵「はい。 なんとお詫びすればいいでしょう。 本当にすいません・・・」

神様「何も謝ることはないんですよ。」

樵「でもそれ・・・(神様の頭を指差す)」

神様「どうしました?」

樵「いや・・・沢山血が・・・(神様の頭を指差す)」

神様「・・・(樵の指の先の方を振り向く)」

樵「いやその・・・。(自分の頭を指し)頭に刺さってるやつ・・・」

神様「頭が・・・!?」

樵「痛くないんですか?」

神様「あなたは正直者のようですね。 いつも頑張って働いておられるようですし、森の動物たちにもやさしくしておられます。」

樵「ありがとうございます。 動物は好きです」

神様「先ほど落とした斧がないとあなたは困りますね!?」

樵「はい。 斧がないと仕事ができません。」

神様「そこであなたに問題、ジャジャン!」

樵「問題?」

神様「一問正解すると10ポイント」

樵「そんなことより斧を・・・」

神様「全問正解者には、そこの池に生息するフナを差し上げます」

樵「いらない・・・」

神様「海は『Sea』、川は『River』、では池は?」

樵「神様、斧を・・・」

神様「チッカッチッカッチッカッチッカ・・・」

樵「えーとなんだっけ・・・思い出せない」

神様「オーディエンス使いますか?」

樵「使えるんですか?」

神様「それではオーディエンスお願いします」

 

SE/鳥のさえずり

 

神様「さぁいかがでしょう?」

樵「さっぱり分かりません。 ・・・あっ、思い出した、えーと、池は確か・・『Lake』です。」

神様「ファイナルアンサー?」

樵「神様『クイズミリオネア』見てるんですか?」

神様「・・・・・残念!」

樵「えぇ?」

神様「行け、は『Go』でしょう」

樵「ひっかけ!?神様なのに・・・」

神様「樵さん、残念ながら没収トでーす」

樵「『ふしぎ発見』も見てるんだ」

神様「えー、20代のOLさん百人に聞きました答えは五つ・・」

樵「『クイズ百人に聞きました』だ、懐かし〜」

神様「社員旅行で温泉に行くなら――」

樵「――神様、神様」

神様「はい!?」

樵「あの・・・」

神様「・・・・・。 さぁ、赤の樵さん、アタックチャーンス!」

樵「あの、神様」

神様「はい」

樵「僕の斧を・・・」

神様「あ、斧ね・・。」

樵「頭に刺さってるやつ・・・」

神様「樵さん、あなたの落としたのは、この金の斧ですか? それとも銀の斧ですか? それともこのほしのあきの写真集ですか?」

樵「なんでほしのあきの写真集なんですか?」

神様「ところどころページがくっついてしまっています・・・。」

樵「ぼくじゃありません。あ、いやぼくのじゃありません。」

神様「あなたスケベですが正直者です。 このほしのあきの写真集をあげましょう」

樵「だからぼくじゃないって・・・ でも、ありがとう」

神様「ではもう一度訊きます。 あなたの落としたのは、この金の斧ですか? それとも銀の斧ですか? それともこの木の・・・(木の斧を探す)あれ?・・・」

樵「気づいてないのか・・・」

神様「あれぇ、持ってきたはずなんだけど・・・」

 

神様、あたりをウロウロする

 

樵「神様、その頭に刺さってるやつ・・・」

神様「あれ?落としたよねぇ、だってねぇ・・・」

樵「神様、あんまり動くと出血が・・・。 神様・・・。」

神様「え、だって・・・これであなたが、『私の斧は使い古した木の斧です』って言って、この金の斧と銀の斧をあげるんでしょ・・・、ちょっとこれ持ってて(金の斧と銀の斧を渡す)」

樵「あ、ねぇ神様・・・」

神様「それいいや、どうせあげるやつだから」

樵「神様、神様」

神様「ん?」

樵「血がやっぱり・・・」

神様「ん? ・・・(自分の頭に木の斧が刺さっていることを確かめる)」

樵「本当にごめんなさい」

神様「あ、これのこと言ってたのかさっき」

樵「悪気はなかったんです。手が滑ってしまって・・・」

神様「ちょっ、ちょっと待って、なんかだんだん白くなってきた・・・」

樵「大丈夫ですか神様」

神様「うん、大丈夫、大丈夫・・・だって神様だし・・・。 はぁ・・・なんか・・・あれ、増えた?」

樵「もう僕が何人にも見えちゃってるんですね」

神様「あれあれ・・・なんか、楽しかったこととか急に思い出してきた・・・」

樵「走馬灯のように振り返ってるんだ。神様、しっかりしてください」

 

神様、ついに倒れる

樵「神様!」

神様「う、うぅ・・」

樵「神様、しっかりして!」

 

神様、自分の血を触って、血文字を書こうとする

 

樵「・・・何? なんですか?」

神様「ダイイングメッセージでお前のこと書く」

樵「止めてください。」

神様「うぅ・・・うっ」

樵「神様ー!」

 

神様、動かなくなる

 

樵「あぁあ・・・。 まぁ斧もらったからいいか」

 

樵、退場

暗転

 

 

 

 

 

おしまい